2017年度 技術講習会


第2回 技術講習会 2017年12月9日

SSP会員の活動と撮影テクニックの実際最新機材」

 

2017129日 会場:アルカディア市ヶ谷(東京都千代田区)

 

 年末に開催の技術講習会には約60名の参加があり、盛況の講習会となりました。
 今回は、水中写真・昆虫写真・科学写真分野で活躍の実力派写真家3名の撮影機材へのこだわりと撮影の苦労点などを作例とともに紹介していただく講演会としました。以下、講演概況を紹介させていただきます。


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【トトメレンズで見た水中世界!素晴らしい被写体との出会いがたまらない

小林 たかじん氏

 ダイビング専門誌でフリーカメラマンの後、伊豆に移り住み、水中写真専門のダイビングシショ ップをオープン。トトメレンズなど水中撮影機材アクセサリーの製造販売をしています。今回は、トトメレンズを使った水中世界をご紹介させていただきます。

 トトメレンズで見た水中世界を17年間撮り続け、ならではの素晴らしい被写体との出会いがありました。水中で生物にアプローチする場合、30㎝離れるのと1㎜まで近づき撮影するのとでは、随分相手方の反応が違います。30㎝離れるとほとんどの生物はじっとしていますが、1㎜だと触れられるのもいますが、ほとんどが逃げたり攻撃してきたりします。ヒメイカは大きさが1~2㎝で、海藻にへばりつき産卵をし、卵を見守るため離れなくなり動かない個体もいるので撮影しやすく、5㎜位離れ


た位置で撮影できます。伊豆の場合だと2月位が撮影時期になります。ミズヒキガニは5㎝位と大きなカニで、レンズを足でまたごうとしている動きが巨人のように写るため、夢中で撮りました。今使っているトトメレンズですがマスターレンズにキヤノンの16~35㎜を使っています。ズームによって一番ワイド側にすると全周魚眼になり、対角線魚眼にもなるので、丸いイソギンチャクを撮ると不思議な絵が撮れます。

 この仕様で、クマノミの白い部分のうろこ1枚1枚までディテールが出せるようになりました。ガラスハゼの鱗も表現できるようになりました。タツノオトシゴは必ずと言 って良いほどカメラ側に向かないので撮影に手間取る生物ですが、このタツノオトシゴはレンズを覗き込んできました。トトメレンズはいかに近づくかですが、こちらからだけでなく向こうから反応してくる時があり、辛抱強くやっているとこのようなシーンに出会えるのが、トトメ写真の醍醐味です。
もし興味がありましたら、静岡県伊東市富戸にてダイビングとフォトサービスを提供するオーシャンズファミリーを主宰し、トトメレンズを紹介していますので是非ご来店ください。


小林たかじん氏 HP

Takajin Official Web Site

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【虫の眼レンズを通して見る昆虫の生態

鈴木 格氏

 虫の眼写真を始めたのは、おそらく十数年前です。最近は、あまり撮影時間がとれないのですが、アフリカやタイにも行き、面白い昆虫を撮影しています。

 虫の眼レンズの特徴から説明します。画角が広いこと、被写界深度が深く小さい被写体にピントが合いつつ撮影倍率が高いことです。大体35㎜換算で3倍位まではいきます。デメリットは、解像度がどうしても市販一眼レフ用レンズと比べると落ちます。レンズが非常に暗いので多くの場合動きのある昆虫ではストロボを使い動きを止めることになります。対応ストロボは、大手メーカーの市販品が無いので殆どの場合自作する必要があります。このメリット・デメリットを楽しめるのかは使い手次第です。では、虫の眼レンズで可能な撮影例と苦労を説明していきます。被写界深度が深いので、生息環境を取り入れた撮影が可能です。


 虫の眼写真を見るときに、この会場のように大きな画面で見ると満足できます。大きい画面で見るほど虫の眼写真は面白く感じます小さな本で見たときは、あまり面白くなくても大画面で見るとなぜが面白いですね。

 


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【結晶と鉱物の高倍率接写

田中陵二氏

 科学者の視点を写真で表現する、美しい写真で科学を語るのが一番強いアウトリーチになるのではと考えています。2つのアプローチがあり、科学のわかるカメラマン(カメラマンが科学を勉強する)か、科学者がカメラを勉強するかのどちらが良いかと考えたとき、やはり後者の方がある程度敷居が低いかなと考えました。やってみると写真の技術は奥が深いものでありました。

 顕微鏡で撮影したのが顕微鏡写真と思われていますが、対物レンズの直焦点でマクロを撮ることもできますから、私の考えでは、対物レンズに投影レンズを使ったもので対物レンズの空中像を拡大したものをカメラで再結像したものを顕微鏡写真ととらえています。

 このような元素の写真は、化学の技術とカメラの技術の双方が無いと撮れないです。最近は元素から離れまして、色材の科学と博物誌、色と


化学や芸術とサイエンスのかかわりをテーマに写真を撮り、『日経サイエンス』、『月刊化学』などに連載し、発表もしています。
 まとめると、“べロース大き”、“シャープな高倍率マクロは深度合成の出番”、“写真を科学のコミニュケーションの道具に使うことが出来る”ということです。道具に凝りだすと、いくらお金があっても足りないとは言っても、かなり道具にお金をかけていますが、自分の求める写真が撮れる最低レベルの道具で納得できる写真が撮れれば、それで良いというのが私の至った考えでした。


田中陵二氏 HP

結晶美術館

SSP会員情報誌『SSP情報』86号より抜粋

撮影・文:日比野和範(セミナー委員会)

第1回 技術講習会 2017年5月20日

 

「注目の最新機材、FUJIFILM GFX50SとPanasonic LUMIX DC-GH

 

2017520日 会場:アルカディア市ヶ谷(東京都千代田区)

 

  2017年度のSSP定期総会に併せて、約60名を超える参加者で技術講習会は開催されました。今回は、先に横浜で開催のCP+で最も注目を浴びた最新機材2機種にスポットを当てた講習会でした。この度の技術講習会にご協力いただきました賛助会社(講演順)の富士フイルムイメージングシステムズの稲葉様・木内様、パナソニック㈱AVCネットワーク社の井上様・大野様には、この場を借りて厚く御礼申し上げます。

 


 

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 【中判サイズ大型イメージセンサーによる高画質を実現 FUJIFILM GFX50S

 

◆富士フイルムイメージングシステムズ㈱ 

木内格志氏の機材説明より

 ミラーレス中判一眼レフFUJIFILM GFX50Sを紹介していただきました。APS-Cサイズで登場したXシリーズは、多くのプロ・アマチュアに使用され、次のステップが欲しいとの声からGFX50Sが開発されました。広告写真で大きくトリミング・修正をする場合や風景・自然物を撮った場合の限りなく細かいところまでの描写、遠くの枝まで描写したいなどのニーズに対応し開発されたのがGFXです。

 


 

◆試用レポート:SSP会員・岡本洋子氏の講演より

 

 フィルムシュミレーションは、往年のフィルム全てが揃っています。PROVIA、Velvia、ASTIA、クラシッククローム、ネガ系(コントラストの強いのとスタンダードとACROS)。モノクロのACROSはコントラストがあって綺麗です、これにフィルターを付けられます。さらに通常のモノクロームにもスタンダードからフィルターを付けた設定の表現ができます、他には遊び心でセピアもあります。CLASSIC CHROMEは、被写体によってはシックな落ち着いた感じに仕上がります。通常のモノクロとアクロスは、黒のしまり・シャドー部が良く、グレインエフェクト機能ONで粒状感を出し、フィルム調の風合いに仕上げられ、デジタルでは無くなった粒状感が表現できます。


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【世界初の4K/60p動画記録を実現 Panasonic LUMIX DC-GH5

 

◆パナソニック㈱AVCネットワーク社

井上義之氏の機材説明より

 ミラーレス一眼レフLUMIX GHシリーズ、LUMIX GH5をご紹介していただきました。Gの後のHは、ハイエンド・ハイブリッド・ハイパフォーマンスかつHDを被らせた名称で、写真家と動画撮影の皆さんにも満足していただけることを理想に開発した機種です。GH5は、世界初の4K/60pの動画記録、4:2:2 10bit 4K/30pの動画記録を実現し、プロフェッショナルな映像制作現場の要求に応えるGH4の後継機種です。


 

◆試用レポート:SSP海野和男会長の講演より

 

 皆さんは、それぞれ自分の目的により機材を選ぶというのが、僕は良いと思います。蝶々が飛ぶところを撮りたい場合は、GH5でも良いしオリンパスでも良いのですが、今のところGH5の方が30コマ、1600万画素で6K。EM-1は2000万画素です。

 では、写真の画質はどうかと言うと、EM-1に劣るところは無いと思います。今までにパナソニックのカメラを使ってきましたが、GH5は最高に良いと思いました。動画をかなりまじめにやろうという人はGH5になります。動画を殆ど撮らないという人には、EM-1もお薦めです。


SSP会員情報誌『SSP情報』84号より抜粋

撮影・文:日比野和範(セミナー委員会)

SSP特別セミナー連動催事海野和男写真展 2017年8月19日~9月17日

 海野和男写真展

2017年8月19日~9月17日

 ケンコー・トキナーギャラリー

連動催事として開催(B0作品5点、A0作品6点展示)

SSP特別セミナー 2017年4月29日

『科学写真の不思議世界と花の拡大写真・
        その魅力と撮影テクニック』

2017年4月29日(土/祝日) 午後3時開演~午後5時

会場:ケンコー・トキナー・セミナールーム

  (中野駅より徒歩7分)   

講演

伊知地国夫 「身近な科学現象を撮る」(70分) 

石黒久美   「接写リングで花を撮る」 (50分)

 

日本自然科学写真協会有志による自然科学写真撮影技術読本「超拡大で虫と植物と鉱物を撮る」の刊行に伴い、特別セミナーを開催いたしました。